さて、世の中にはコスプレと言う文化があるのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。コスプレという文化について、画面の前の読者の皆様はどう思われるであろうか。個人的私見であるが、私は良いなと思うけれど、いまいち何が良いのか分からない次第である。
唐突であるが、この作品の主人公である男子高校生、高橋の青春は終わりを告げようとしていた。その理由は、彼の青春の舞台である所属する部活、写真部が新入部員が入部せずに、廃部の危機に陥っていたからである。
「よかったら私、写真部に入りましょうか」
そんな彼へと、彼の事を知っているのかどこか気安い様子で声をかけてくる少女が一人。雑誌モデルもやっている学校一の美少女な後輩、さな(表紙)である。
彼女にはひた隠しにしていた趣味があった。それはコスプレ。しかも少女漫画ではなく少年漫画の方が好き、という女子としては少し変わった趣味の持ち主であった。自撮りが壊滅的に苦手であると語る彼女により、彼女のカメラマンとして彼女を撮る事になる高橋。
彼には一つ、拭えぬ苦い過去があった。中学時代、写真撮影が趣味である事を否定され貶された事により人間を撮れなくなってしまったという事。けれど、それを知ってか知らずか、さなはぐいぐいと、彼に向かい距離を詰めていく。
「めっちゃハマってるじゃないですか」
良い写真を撮ってもらうために彼に作品を布教し、順調に染まりつつある彼を見て嬉し気に笑ったり。
「ですね。じゃあ、ご飯作りましょうか」
布教のために彼の家にBlu-rayBOXを持ち込んだかと思えば、彼の家で晩御飯を作ったり。
「中学生の頃の話なんて、高校生になったら関係ないですよ。大人になればもっと関係ないです」
更には衣装作りの為二人で出かけた先、高橋のトラウマの象徴であるかつての同級生に遭遇した時には、敵意を隠さず切り捨て、彼の心を少しだけ軽くしたり。
彼女がいたから、側にいてくれたから少しだけ一歩を踏み出せた。だからこそ今度は、自分が。尻込みし立ち止まってしまったさなの背を、高橋は必死に、けれど不器用な優しさでそっと押す。
「私、今日のイベントに出られてよかったです」
そして、大きく羽ばたき輝く彼女の笑顔に目を奪われた時。その瞬間、まるでとくんと胸が高鳴る様に。恋に落ちる音が優しく響き、高橋は否応なく自身の恋心を自覚する。
けれど、彼は知らない。さなもまた、彼の事が好きである事を。彼女が傍にいてくれるのは、かつて自分が彼女の事を救っていたからという事を。
そう、この作品は始まった瞬間に堕ちているラブコメであり。両片思いな二人が心触れ合い近づけていく、まるで砂糖菓子を舌の上で転がすかのように優しく濃厚な甘さのある作品なのである。
全てのラブコメ好きの読者の皆様は是非に。
きっと貴方も満足できるはずである。
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