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題名:このラノ2016:予想との比較と考察

投稿者:管理人
投稿日時:2015-11-26 18:45:26 +0900
本文:

「このライトノベルがすごい! 2016」、通称このラノが11月21日に発売されました。当サイトでは作品ランキングの順位を予想 (ttp://lanorevi.net/articles/508) していたわけですが、予想と実際の結果を比較するとともに、このラノのデータを見ていくつか考察した点等を書いてみます。

【予想の的中率】

まず、予想がどの程度合っていたかをチェックしてみます。細かい順位まではどのみち一致しませんから、ここでは上位20位と上位50位について、選ばれた作品がどれだけ重複しているか、を数えてみます。

上位20位 - 11作品が重複(55%)
上位50位 - 24作品が重複(48%)

ここで「上位20位で11作品が重複」というのは、このラノの1-20位の20作品と当サイトの予想した1-20位の20作品とで、11作品が両方に共通して含まれている、ということです。上位50位も同様。

さて、これはいいのか悪いのか?他に同様の予想を知らないので比較のしようがなく何とも言えません。コップの半分もあるか半分しかないか、みたいな。まあ個人的には半分当たったなら上出来かなと思っているのですが。

それはさておき、外れた方の半分について、なぜ外れたのか?を検討してみます。結論から書くと、主要な原因は4つあると考えています。

1)同シリーズ複数巻の扱い

上述の予想記事で書いたとおり、このラノでは作品のシリーズ単位で投票しますが、当サイトでは単巻ごとに作品ページがあるため、同シリーズで複数巻が対象期間内に出版された場合、単巻ごとの情報をどうやってひとつのシリーズとしてまとめるか?という問題が生じます。この点がこのラノと当サイト予想のいちばんの違いなので、ランキングの食い違いの原因としてはここが真っ先に思い浮かびます。

今回は「二乗和の平方根」を使ったわけですが、このラノランキングと比較してみると、このやり方では結果的に巻数が多いシリーズを過大に高く評価してしまったかな、と思っています。

たとえば、「絶深海のソラリス」は期間中1冊だけ出版されまして、感想記事は15記事あります。「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」は期間中3冊出版されまして、感想記事数はそれぞれ12/8/6です。(実際には記事数だけでなくアクセス数も考慮していますが、ここでは説明を簡潔にするため、記事数のみで説明します。)今回採用した「二乗和の平方根」を求めると、ソラリスの方は変わらず15.0、ガンゲイルは15.6となり、ガンゲイルの方が上位に来まして、実際当サイト予想ではそうなっています。ですがこのラノではソラリスの方がシリーズとしては上、となっています。

今考え直してみると、「1冊で15記事」と「3冊でそれぞれ12/8/6記事」だと、たしかに前者の方が人気かな、と思えてきました。「前者は読者が15人。後者は、巻を追うにつれ読者数が12->8->6と減っている」とも解釈できるのですから。複数巻のトータルの記事数/アクセス数より、1冊あたりの数値を重視すべきように思えます。

今回の当サイト予想では 「魔弾の王と戦姫」「軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!?」「クロニクル・レギオン」「吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる 」「CtG ―ゼロから育てる電脳少女―」などがランクインしています。これらはいずれも期間中に複数巻(CtGは2巻、他は3巻以上)刊行されており、そのため当サイトでの評価は高くなっています。ですがどれもこのラノの方ではランク外でした。これがランキングの食い違いの大きな要因となっています。

今回の結果を踏まえ、来年は複数巻をまとめるやり方を見直したいと考えています。

2)新人賞バイアス

当サイト予想では新人賞受賞作が多数ランクインしています。「Yの紋章師」「ひとりで生きるもん!」「黒崎麻由の瞳に映る美しい世界」「リーングラードの学び舎より」「災厄戦線のオーバーロード」「ようこそ実力至上主義の教室へ」「できそこないの魔獣錬磨師」「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」「ひとつ海のパラスアテナ」など。
このうち、このラノの方で50位以内に入ったのは「ロクでなし~」のみ。60位まで広げても「~パラスアテナ」と「ようこそ実力~」のみです。当サイトのランキングは新人賞作品をこのラノよりかなり高く評価していることが見てとれます。

なぜこうなったのかと考えてみるに、ラノベブロガーの皆さんが新人賞作品を好んで取り上げるから、だと思われます。ラノベブロガーの方々は大体皆さん、新人の発掘に熱心です。面白い新人が出てきたら積極的に応援していこう、という姿勢が感じられます。新人発掘の面からは最も注目すべきなのは新人賞ですから、受賞作はとりあえず買って読んでレビューを書く、という傾向があります。すると当サイトの評価方式ではレビュー記事が多いほど高得点なので、新人賞作品の多くが上位に来ます。

ただやはり、新人賞作品にも面白いものもあればそうでもないものもある。その結果、レビューは書いたけど評価はそれほど高くない、だからこのラノでは投票しない、というものもやはり一定の比率であり、それがランキング食い違いの原因のひとつになっているようです。

3)賞の対象:女性向けは含まれるか?

当サイト予想では女性を主なターゲットとする作品が3作入っています。「紅霞後宮物語」「おこぼれ姫と円卓の騎士」「(仮)花嫁のやんごとなき事情」。これに対してこのラノでは、女性向けの作品はひとつもないようです。(しいて言えば「薬屋のひとりごと」と「螺旋時空のラビリンス」が近いですが、これらは作風的に女性専門とまでは言えないでしょう。)

このラノ編集部のスタンスとしては、女性向けは排除まではしないものの、メインのターゲットとしては想定していないものと思われます。協力者のリスト(このラノ 37頁)を見ても、当サイトでもよく見かけるブロガーさんが多い半面、女性向けを得意とするブロガーさんはほとんど協力者になっていません。これがランキング食い違いのもうひとつの原因になっていると思われます。

あと女性向けの話とはちょっと違うのですが、このラノで宝島社の作品は対象外となっているのですが、私の見落としミスで1作宝島社の作品(「着ぐるみ最強魔術師の隠遁生活」)を入れてしまいました。これも「そもそも賞の対象外」カテゴリとして挙げておきます。

4)モニタ票の特異性

このラノでは協力者、HP、モニタの3種類の票がありまして、それらを総合してランキングを算出しています。この3種はそれぞれ特徴がありまして、協力者が推す作品、HPが推す作品、モニタが推す作品がかなりくっきり分かれます。

モニタ票の特徴は、「古くからのメジャーな作品が多い」という点です。このラノ53頁に3種それぞれ単独のランキングがあります。それによると、モニタ票オンリーだと2位「デュラララ!!」、8位「キノの旅」、10位「バカとテストと召喚獣」。また51頁の表を読むと、11位は「変態王子と笑わない猫。」と「緋弾のアリア」がタイとなっています。

これらの作品は、当サイト予想ではいずれもランク外となっています。ラノベブロガーさんたちの記事は傾向として「新しい作品をみんなに紹介したい」というスタンスが多く、これらの「みんなが知ってる」作品は記事数が少なくなる傾向があり、そのため当サイトでの評価も低くなります。これもまたランキング食い違いの原因のひとつです。

なぜモニタ票にこういう傾向があるのかは推測するほかはありませんが、モニタの対象が「年間51冊以上ラノベを読む12-18歳の中高生」とのことなので、おこづかいが少なく、図書館やブックオフ108円などで読むことが多いため、新刊は入手しにくく、入手しやすいメジャーな旧作を読むのかな、などと考えています。

 * * *

他にもいくつか細かい話はあると思いますが、上記の4点でランキング食い違いについてはかなりの部分説明できるのではないかと考えています。このうち1)の複数巻の扱いに関しては来年は対策する予定ですが、2)3)4)に関しては当サイトの予想方式だとちょっと対策しづらいため、今回のやり方のままで行こうと思っています。その結果、新人賞が多い/女性向けも含む/過去の名作は評価が低い、というランキングになりますが、「ここのランキングはこのラノとはこういう違いがあるんだな」と思って見ていただければよいかなと思っております。このラノの予想として見るなら、当サイトのランキングのうちから新人賞と女性向けを落とし、過去の名作がいくつか入る、と考えるとだいぶ予想としての精度は上がると思われます。

【このラノにおけるカテゴリ別配点】

さて、このラノでは前述の通り協力者、HP、モニタの3種の票を総合してランキングを算出します。モニタとHPは1票につき1位5点、2位4点、3位3点、4位2点、5位1点。協力者だけは1位10点、2位9点、3位8点、4位7点、5位6点、となっています(作品ランキング)。ただこの3種間の重みについては、このラノ37頁で「回答者(数)に応じて傾斜をかけ」とあるだけで、これだけでは具体的な計算方法は示していません。ですが今回、ランキングのデータを眺めていて計算方法が判明しましたので記しておきます。

51頁の表の、たとえばモニタの列を見てみます。53.85などと小数点2桁の数字が並んでいるので、いかにも連続的に値が変化しているように一見思えますが、よく見ると10.77のような値が複数回出ていて、実は特定の値しか取っていないことに気づきます。考えてみれば回答者は65人しかいなくて(37頁)、上記のように1票につき1~5点を足していくので、とびとびの値にしかならないはずです。

42~54位あたりを見ますと、4.62, 6.15, 3.08, 1.54といった数字が目につきます。これらから、モニタの点数の間隔は約1.54であることが推測できます。実際、モニタの列の全ての数値は1.54のほぼ整数倍になっています。

ではこの1.54というのは何を意味してるのだろう?と考え、試しに回答者数の65人をかけてみると、なんと!ほぼ100ぴったりになります。

つまりモニタ列の点数は、1票あたり前述のように順位に応じて1~5点を与え、それに1.54(=100÷65)をかけたものです。それを作品ごとに全ての票について集計しています。モニタ票すべての点数を足すと、1人あたり(1+2+3+4+5=)15点で、これに(100÷65)をかけたものが65人分なのでトータルはちょうど100倍で、計1,500点になります。

ならば協力者やHPも同じなのでは、と考えて確かめてみると、ビンゴでした。協力者数とHP回答者数はそれぞれ56人と1128人ですが、協力者の点数は1票あたり1.79(=100÷56)をかけたもの、HPは1票あたり0.089(=100÷1128)をかけたもの、となっています。HP票の点数トータルはモニタと同じく1,500点。協力者は1人あたり(6+7+8+9+10)=40点なので、トータルは4,000点です。ちなみに手元にあったこのラノ2015でもざっとチェックしてみましたが、やはり同じ計算方法になっているようです。

以上がこのラノランキングの具体的計算方法になります。もっとも52頁で「来年以降はランキング方式を変えるかも」と書いているので、来年は当てはまらないかもしれませんが。

なお、上記のことに気付いて自分は「大発見だ!」と思ったのですが、ググったところ
「togetterまとめ:このラノ2013ランキングの問題点とモニター票についての個人的考察」(ttp://togetter.com/li/410148)
で@highjelliesさんが同様のことにとっくの昔に気付いておられました。

…というわけで、来年もまたランキング算出してみようともくろんでおりますので、来年また覗いてくださるとありがたいです。