消費税、市民税、県民税、確定申告。これらの用語は全て税制に関わる用語である。税制に関して、画面の前の読者の皆様はどう思われるであろうか。私個人としては給料からの天引きという形で勝手に回収されているけれどイマイチ役立つ使い方をされている印象はないが。ではもし、現代世界ではなくファンタジー的な異世界に税制があったら一体どうなってしまうのであろうか。
「我の配下となれば、世界の半分をくれてやろう!」
「え、マジ!? わかった!」
とある異世界にて今まさに始まろうとしていた勇者メイ(表紙中央)と魔王ブルー(表紙右)の決戦。が、その決戦は始まる前に終わろうとしていた。魔王によくある台詞である世界の半分をくれてやるから配下になれと言う言葉に、銭ゲバな一面をもつメイが反応してしまった事により。
世界の半分を手に入れ、めでたしめでたし・・・で終われれば良かった。だが終わらなかった。突如現れた天使、ゼオスは二人に告げる。
「贈与税がかかります」
そう、ゼオスは「税」を司る天使であり、この世界は何と「税」に関する制度が根幹を司る世界だったのである。
考えてみれば当たり前かもしれない。世界の半分に贈与税がかかるのならば、そうなってしまう筈である。
その課税を何とかする為、偽装結婚をするメイとブルー。しかし魔王城の経理を監査したゼオスはザル過ぎる経理に追徴課税を課し、三か月の納税猶予を与えてくる。
進退窮まる勇者と魔王。そんな二人は過去の魔王が遺した手がかりから最後の希望を見つけ出す。その名はクゥ・ジョ(表紙左)。世界最後の「ゼイリシ」の少女である。
まずは魔王城の家事按分を申告し半額に。更には魔王城の魔物達の福利厚生費、深夜手当、残業代を計上し国債を売りつけ、新たな産業を興したり。
正しく八面六臂の大活躍。だけどそれをよく思わぬ輩も存在する。その正体、それは戦争が続く事で得をむさぼる悪党共。彼等の卑劣な手により時間は削られ、約束の刻限は来てしまう。
だが、それを助けるものがあった。それは、ブルーの無償の優しさ。誰かに施してきた善行が、巡り巡って助けとなる。正しく、「情けは人の為ならず」と言わんばかりに。
「これが最後の確認です。申告は、先程のでよろしいのですね?」
「あります!!! まだあります!!」
異世界も税制があったら世知辛い。けれどどんな世界でも、善行の尊さと人の温かさは変わらない。
読むと少しだけ税に関して詳しくなれるかもしれないこの作品。
税について知りたい読者様、独特の温かさが好きな読者様にはお勧めしたい。
きっと貴方も満足できるはずである。
剣と魔法の税金対策 (ガガガ文庫 そ 1-1) | SOW, 三弥 カズトモ |本 | 通販 | Amazon